中太 月夜に形を潜める

※同棲してるご都合設定

※太宰が病んでる 中也は世話焼きなだけ

※敦きゅんみを感じるし本人もその場のノリ

※黒の時代1章しか読んでない無能が書きました

※パラレルだと思って読んでね(多分違う)

※深く考えないで読む意味深な何か

※途中で終わる










 最近太宰が良く眠れていないらしい。隣で規則正しい寝息をし始めたかと思えば、暫くすると月夜に照らされる光の筋が見える。反射するように部屋に差し込めば、窓際の太宰が身じろぎする。呻き声、将又少し違うか。似通った声を上げて、そっと泪を流す。汗も掻かなければ痛みを感じている風でもない。只太宰は、此の月夜が、嫌いなのだ。

 其の”嫌い”は俺に対して抱く感情と同じ物なのか、問いかける訳も無く。滑稽だ、何て幼稚なんだと俺は溜息を吐いて、太宰の隣にそっと寝転ぶ。ふるふると震える肩に、返って来る筈の無い問いを投げかける。俺も俺で滑稽な事をしているだろうし、太宰に気付かれでもすれば数週間は弄られても仕方が無い。誰の為でも無ければ、対価が有る訳でも無い。

 只、此の、飄々とした莫迦凡人に報いが無い事に、相棒として聊かの同情を抱いてしまったのかも知れ無い。此奴の所為で夜眠りに就け無かったりでもしてみろ。任務に支障が出るだろうが。

「おい、眠れるのか、手前」

 矢張り、返答は無い。有るとすれば微かに聞こえる日暮の声程度だ。然し俺の心中とは反対に、問いは重ねられた。頬杖を付いた右手を降ろし、少しだけ近付いた。

 太宰が最も隠しておきたいだろう秘密。秘密主義で面倒事を持ち込み易い太宰の、深過ぎる闇の、其の又闇の中。黒煙を上げて、今も黑に染まり続けている。そんな処ですらも。大嫌いな環境で、大嫌いな俺に、土足で踏み込まれる。苦しさで此奴が死ぬのなら、歓喜で酒が幾らだって呑めそうだ。だと云うのに、心中とは正反対に、言霊は紡がれて、云った。解き放った。

「包帯の下の傷でも、痛んでンじゃ無ェだろうな」

――だったら容赦し無ぇぞ、太宰。

 言霊は、一度目を醒ますと、浮遊して、所有者関係なく彷徨うらしい。何処かで耳にした逸話は果たして、誰のモンだったろうか。


∸∸ D side  ..


「ねェ織田作、夢ッて有ると思うかい?」

 特に中身の無い、興味本位の台詞。只問いかければ済むだけの、浅はかとも云える其れ。

 任務の帰りに、織田作を見付けて、捕まえてみた。話は其処から始まる。暇そうに大きいとは云えない背中が歩いていたから、気に成ったのだ。

 織田作の横を外套を靡かせながら歩いていると、煙草を口許から離して、織田作は此方を振り向いた。如何やら気付いてい無かったらしい。

「太宰か。如何した、何か用でも有ッたか」

「大有りだよ! 折角私が質問したッて云うのに!」

 拗ねた様に服の裾を掴んで、恋仲の二人で在るかの様に振舞う。すると織田作はきょとんとした表情で見返して来た。何処まで確信犯で、何処まで鈍感なのだろう。此の男は。等と考えていると、不意に織田作が私の腹部に手を添えて来た。

「――ッ一寸、何するのさ突然!」

 素っ頓狂な声を上げてしまい、深紅に染まった顔を逸らす。何故だか妙に気恥ずかしくて、織田作の顔を直視出来なかった。そのまま摩って来る織田作にヒートアップ――温度上昇――する顔を、織田作のすっかり硝煙の香りがするスーツに埋めた。

 無言で摩って来る織田作に震え上がって、声に成らない声を噛み殺していると、頭上から落ち着いた声が降って来た。

「例えば、俺の夢は、太宰の命は絶対に護り抜けたら善い、とかな」

 言葉を慎重に選んでいる様な、不可解な感触。心に柔い刺激。優しい筈。優しい、優しい。彼の。でも、一寸違う。私の望む夢なんてのは、屹度織田作には判らないんだ。求めるモノから、手に入るモノから、思想から。何もかも違っているから。気付かれない。判っていた筈だった。


 叶わない夢が、私にも織田作にも、有ると私は思っている。織田作は人の命を護る事。私はいつか心中をすること。誰への報いでも無い。誰の為でも無い。個人の為? そうでもし無ければ、生きる意味が見つかりはし無かったから? 答なんてとっくの昔に消え去った。

 ポートマフィアと云う、深淵の腐り切った世界で生きている以上、もう、まともに生きるなんて出来ない。屹度織田作は、私に其れを遠回しに伝えたかったのだろう。厭だな、口下手なんてのは。


「はは、そうかい! 君らしい返答だよ! 織田作は矢張り織田作だよ! 口下手な私には到底、綺麗事なんて云えやし無いよ!」


 もう少しで、届いた筈だったのに。遠ざけたのは、私だった。余計に詮索をして、言葉で問いかける事なんてした事、無かった。どれが本当で、どれが嘘だとか。私が怖がりだったとか、織田作がそうじゃ無かったとか。――厭、”嘘吐きの本音”程、伝わりはし無いんだ。屹度、必ず。


⋯⋯


「――るのか、――」

 ――織田、作……? 厭、でも、もう、此処には……。

「包帯の下の傷でも、痛――だろうな」

 ――心配して呉れるのかい? 嬉しいな、織田作は優しいね、私”なんか”と違って。

 聞いてくれるかい? 織田作。私ね、依り一層、生きている事が苦しくて堪ら無いのだよ。君以上に、私を私だと知っている人は居なくってね、毎日が寂しいのだよ。私は私じゃ無い。別の私を求めている人達ばかりだよ。信じたかったのに、君が居なくなった事が、こんなにも狂わせられるだなんて、私知らなかった。私が”本当の事しか云えない嘘吐き”だなんて、君しか知らなかったからね。

 生きていて善いよ、なんて。云って、呉れやし無かったんだよ、織田作。誰の一人も。私は今度こそ独りだよ。ねぇ、織田作。私、生きていて、苦しい事だらけで、矢っ張り死にたくて堪ら無い。君だけ、君だけだなんて辛過ぎるよ。助けて呉れ給え、って。其の一言が如何しても、放て無いんだ。


「――もう、君は何処にも居ないから」


 知ら無い、知りはし無い侭、知られはし無い侭、死んで、死んで仕舞う。助けて呉れだなんて、助けて呉れる存在が居やし無いから、だから。本当は、真実は。


「――死にそうに成れば、君の夢は叶うのだろうから、屹度、屹度」


 こんな腐った世界で生きるより、素晴らしい世界に君は住んでいる筈だ。だったら、其処に住んでいる方が、ずっとずっと善いんだ。


「――其処で、私の命を、救って呉れ、織田作ッ……」


 心が、咽び泣いている。届きもし無い、届く筈だった存在を、もがいてもがいて手に入れられ無い事を、悟ってしまったから。もう、もう、無理だよ。出来無い。君の様に、振舞え無い。誰一人、私は救え無い侭なんだよ。厭だ、厭だ厭だ厭だ――





夜は眠れるかい?/flumpool  萎えたのでここらで切り上げとく 只管病んでるだけの中太

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