2018 1 ~ 2 log ( 双黒、太中 ) 僅かに背後注意
探偵社大掃除
「太宰さんのデスクに置いてあるライター、捨てた方が良いですよね」
「かれこれ二年は有るな、そろゝ捨てるべきだ」
「何か云ったかい? 国木田君に敦君」
「え、あ、今日の御飯何にしようかなって、料理上手な国木田さんに聞いてたんです」
「ふうん? 私も食べたいなァ」
「貴様は自分で作って食え。そしてとっととライターを捨てろ」
「止めて呉れ給え。これは私の大切なものだ」
「如何せ口から出任せだろう、俺はそんな子供騙しにはしてやられんぞ」
「私はこういう時嘘は吐かない。──知ってると思うけど」
「大切なもの……ってことは、其れだけ大きなことが?」
「聞きたいかい?」
「掃除を終えてからな」
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「却説、粗方片付いたし、話すとするか」
「予定の時刻迄、ざっと二十八分五十六秒だ。十分で済ませろ」
「休み時間じゃないか其れじゃ!」
「なら五分にするか」
「はいゝ十分に収めるよ。──ところで敦君、私の友人は知っているかい?」
「確か、織田作之助さん、でしたっけ」
「然うゝ。其の織田作が持ってたライターが、捨てられなくってね。大掃除の今もずっと私の手元に有るってことだよ」
「煙草吸われてたんですか」
「否、一本も吸っていないよ」
「え?」
「本人は魔除けだと云っていたよ。つまりは気休めってところだね」
「興味深いことをする者だな」
「国木田くんには云われたくないって思ってるかもよ」
「貴様」
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「あの其れって若しかして、"形見"ってこと……ですか?」
「御明察。未練がましい男だと笑って呉れ」
「僕は然う云った形有るものに固執できないタイプなので、御二人が羨ましいです」
「御二人──とは、俺も入っているのか」
「俄に嬉しそうにしないでよ気色悪い」
「はっ倒すぞ貴様」
「……大切なものなら、大切にしておいても、僕は良いと思います」
「其れでは話に成らん。何しろ、どれもこれも然うしていると、キリがないからな」
「孰れは、自分の過去と決別しなきゃいけないなんて、私が思わないとでも?」
「屁理屈か」
「本気だよ。とっくの昔に覚悟してる。……踏ん切りがつかないだけ」
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付き合ってないくせに行為に走ろうとする悪酔い中也の話(軽い接吻有)
「抑々、呑みたいのなら私の家じゃなくて君の家で良いだろう中也」
「臭ェ、人間が住まう処じゃねェ彼処は」
「人の彼女を殺しておきながらよく云う」
「血臭は嗅ぎまくってっから今更如何ってことはねェが、香水が充満していやがる」
「君の趣味が時々判らなく成るよ、流石の私でも」
「此の上ない優越で酒が旨ェ」
「仕様がない、私も数杯だけ嗜むとするか」
「酌して遣っから大人しく座ってろ太宰」
「意味判んないこと云わないで、君は葡萄酒でしょ。離して」
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「あ? んなこと云ってねェよ一言も。俺は先刻しゃぶって遣るつったんだよ」
「急にとんでもないこと、ちょ、だから離してって!」
「良い匂いがするぜェ? 太宰」
「莫迦力……」
「ふはっ、倒れてやんの」
「誰の所為だと」
「俺の所為、だろ?」
「はいゝ然うですね君の所為ですね中也さん」
「云えば判るじゃねェか太宰」
「君と違って物判りは良い方なんでね」
「ふん、莫迦らしい。……腹減った……」
「飲んでばかりいるからでしょ。……食べるならさっさと食べれば?」
「なら遠慮なく」
「……結局こう成るのだね。どれだけ中也は私の其れが好きなのさ」
「少なくとも手前よりは好きだぜ? ……んっ、ふっ、……」
この後滅茶苦茶交わった
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月を見ながらひっそり話す双黒
「月光ってさ、とっても妖艶なオーラを放ってるよね」
「手前の感性は時々如何かと思うぜ」
「失礼な。私は本気で云ってるのだけれど」
「だったら下らねェことほざいてねェで作戦立案しろ、午前七時提出だっただろうが」
「私に話が来たのは提出時刻からざっと二時間後だったよ?」
「あ?」
「済みませぬ、太宰さん。僕の許に手違いが生じた故」
「君の許に届けた誰かが居るかのような云い分だね」
「信じてやれよ糞鯖」
「嘘を吐いて折檻を免れようとしているかもしれないだろう?」
「僕は然程、狡賢くありませぬ」
「だってよ太宰」
「口答えする時点で充分狡賢いじゃないか」
「手前が云うか」
「兎も角、其の誰かを突き止めに行くよ」
「終わったんだな太宰」
「準備は出来たよ。後は"態と罠に嵌るだけだ。其れも、此方のね"」
「手前、自分で自分の罠に嵌る心算なのか!?」
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「仮に盗っ人をXとしよう。Xは"既に書き上がっている作戦書を手に入れた"御蔭で、自分達は"勝ったと思い込んでいる"のだよ。なら選択は疎かに成るし、自分達が袋の鼠だってこと、夢にも思わないだろうね」
「真逆」
「自分達が追い詰められているのなら、あらゆる手を用いて勝とうとする。逆に自分達が勝っていると信じきっているなら、最善の手に囚われるか、舐めて掛かるかの何方かと云うことに相成るのだよ。──ねェ芥川君、君は知ってて遣ったのだろう? 彼奴等は敵の行動を総て見抜き、斯くして心臓部に立ち入ることが出来たと」
「其の中の一人が、手にして居りました故、"連れ立って遣って来ました"」
「ふふ、上手く免れることが出来たね。全く以って其の通りだよ。ま、中也みたいな脳筋にはほとゝ理解しかねる話だろうけど」
「あんな鴨より俺は落魄れてはいねェよ、後で憶えとけ」
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「良し、これで役者は揃ったよ。──却説、継始めようか」
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相棒変更……?
「厭だ、自分は関わっちゃいけない──然うして目を逸らし、高みの見物を決め込む。典型的な傍観者の類だね」
「何が悲しくてこんな屑と肩並べねェといけねェんだよ」
「一度信じ込んだ君の所為じゃァないか。恥ずかしくないのかい?」
「最悪の可能性を視野に入れなかった俺の落ち度だとでも云やァ、手前は満足なんだろ」
「話が早くて助かるよ」
「物好きな奴め」
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「にしても、相棒を変更しろだなんて、首領にしちゃ急な話だね」
「気が変わったんだろ、気分屋が立って歩いてるようなモンだしな」
「否定はしないよ。ま、君が死にそうに成っても、私はこれ迄のように手助けは一切しないよ」
「組織の為に死ねりゃ本望だ」
「君は然う云う男だったね、嗚呼気味が悪い!」
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「──だとか何とか云ってただろうが!」
「私は抑々、"相棒を変更するだなんて一言も云ってない"のだけれど」
「んだとォ!?」
「其れ以上云うと、君に処罰が降り掛かるよ? 私は何方でも構わないけれど」
「巫山戯るなよ、たかが一幹部の分際で!」
「幹部にすら成れず、大した戦績も有りはしない。そして幹部に対して最低限の礼儀すら見られない。もはや誰かの下で無様に死んだ方が、余っ程美麗な気さえするよ」
「貴様……」
「こんな苦しい立場は御免だ、いっそ、いっそ一思いに殺せと強く思ったら、私を呼んで呉れ給え。暇なら来てあげるから」
「んな安直な真似俺はしねェ」
「だってさ、"相棒"。此の儘放っておいたって、処罰に殺されるだけなのにね」
「なら大人しく殺せば良いじゃねェか、何故執着する」
「気に食わなかっただけだよ、とってもね」
「自分勝手も大概にしやがれ、糞鯖」
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